ダイヤモンドの価格は近年、大幅に下落しています。その背景には、人工ダイヤモンドの急成長、経済の変動、そして地政学的な要因が影響しています。これにより、ダイヤモンド業界の大手企業だけでなく、ダイヤを主要輸出品とする国々の経済にも大きな打撃を与えています。
ダイヤモンド価格の暴落は、業界大手デビアスの販売に響いているだけではない。ロシア経済への新たな打撃にもなっている。
ダイヤはロシアの主要輸出品で、西側諸国は昨年初めに対ロシア制裁リストにダイヤを追加した。ウクライナでの戦争が長引く中、ロシア産の人工ダイヤや第三国で加工されたものも制裁対象に含めるなど、制裁は徐々に強化された。
だがロシアのダイヤ産業と同国最大手のアルロサにとっての真の打撃は、業界で広く見られるものと同じだ。つまり、過去5年間で人工ダイヤの価格が75%近く下がり、天然ダイヤ価格の下落幅の8%をはるかに上回っているという実態だ。
ダイヤ価格が暴落、業界大手とロシアの懐を直撃 | Forbes JAPAN 公式サイト(フォーブス ジャパン)
1. ダイヤモンド価格の下落要因
① 人工ダイヤモンドの普及
近年、技術の進歩によって高品質な人工ダイヤモンドが安価に製造できるようになりました。天然ダイヤモンドと見た目がほとんど変わらず、コストが大幅に安いため、多くの消費者が人工ダイヤを選ぶようになっています。実際、過去5年間で人工ダイヤの価格は約75%も下落し、これが天然ダイヤモンドの価格にも影響を与えています。
② 経済の低迷と消費者の購買力低下
世界的なインフレや金利上昇などの影響で、贅沢品への支出を控える消費者が増えています。特に高級ジュエリー市場では、購入を見送る動きが目立ち、需要の減少が価格の下落を加速させています。
③ 地政学的な影響と対ロシア制裁
ロシアは世界最大級のダイヤモンド産出国であり、国営企業アルロサが市場の多くを占めています。しかし、西側諸国がロシア産ダイヤに対する制裁を強化したことで、ロシアのダイヤ輸出が大きく影響を受けました。また、制裁を逃れるため第三国で加工されたダイヤも市場で混乱を生み、価格のさらなる不安定化につながっています。
2. 価格下落の世界的な影響
① ダイヤ業界大手の経営悪化
デビアスなどの大手企業は、価格下落の影響で在庫が増え、売上が低迷しています。デビアスのダイヤ在庫は昨年末時点で約20億ドル(約3050億円)にも膨れ上がり、時価総額も大幅に減少しました。これは100年以上の歴史を持つダイヤモンド業界にとって深刻な問題です。
② ロシア経済への打撃
ダイヤモンドはロシアの主要輸出品の一つであり、価格の下落と制裁の影響でアルロサの生産量も減少しています。2024年の生産量は前年比4.6%減と、2年連続で落ち込んでいます。これはロシアの外貨獲得にも影響を与え、経済全体に負の影響をもたらしています。
③ 消費者と市場の変化
人工ダイヤの台頭により、天然ダイヤの希少価値が相対的に低下しています。今後も消費者が手頃な価格の人工ダイヤを選ぶ傾向が続けば、天然ダイヤの価格はさらに下がる可能性があります。一方で、天然ダイヤの高級志向が強まる可能性もあり、宝飾品市場の再編が進むと考えられます。
ダイヤモンドの価格暴落は、人工ダイヤの普及、経済の変動、ロシア制裁など複数の要因が絡み合って発生しています。これにより、ダイヤ業界の大手企業やロシア経済に大きな影響を与えており、今後も市場の変化が続く可能性が高いでしょう。